寒水かのみず掛踊かけおどり

ユネスコ世界無形文化遺産に指定された、
明宝寒水地区の伝統行事

寒水の掛踊(かのみずのかけおどり)は、岐阜県郡上市明宝寒水に伝承される風流の太鼓踊です。毎年9月第2日曜日とその前日に、氏神である寒水白山神社の祭礼で奉納されます。
踊り手たちは役者と呼ばれ、シナイと呼ばれる長さ3.6mの花飾りを背負った拍子打ちをはじめ、様々な扮装をした役者が参加します。神社で踊る際は、4人の拍子打ちが庭の中央に、その他の役者たちは外側で円陣を形作り、囃子(はやし)と掛け合いの歌に合わせて踊ります。
地元では300年の歴史があると言い伝えられていて、寒水で掛踊が奉納された最古の記録として、天明元年(1781)の年記のある文書「当村氏神白山大権現祭礼之覚(写)」が確認されています。

開催日時
毎年9月第2日曜とその前日

  • 国の重要無形民俗文化財

  • 岐阜県重要無形民俗文化財

  • 国の選択民俗芸能

  • ユネスコ無形文化遺産

  • ・昭和37年 岐阜県重要無形文化財に指定

  • ・昭和49年 記録作成等の措置を講ずべき無形文化財に選択

  • ・昭和50年 文化財保護法の改正に伴い、記録作成等の措置を講ずべき無形文化財から、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に変更

  • ・昭和51年 岐阜県文化財保護条例の改正に伴い、岐阜県重要無形文化財から岐阜県重要無形民俗文化財に変更

  • ・令和3年 国重要無形民俗文化財に指定

  • ・令和4年 ユネスコ無形文化遺産「風流踊(ふりゅうおどり)」(全国各地の国重要無形民俗文化財41件で構成)のひとつとして登録

寒水の掛踊(かのみずのかけおどり)

現在、寒水の掛踊は寒水掛踊保存会が中心となり、準備から本番、後片付けまでを自治会と協力しながら行っています。8月のお盆が過ぎた頃に役者の割り振りを決めて、毎晩踊りや囃子を練習します。
祭礼の1週間前には、大勢の住民が集まって掛踊で使用する道具の飾りの製作や、損傷個所の補修を行います。本番直前には、総練習といって役者全員がそろっての通し稽古が行われます。
寒水白山神社の祭礼は1日目が試楽(しんがく)、2日目が本楽(ほんがく)と呼ばれます。掛踊は2日とも、中桁(なかげた)という屋号の旧家の前庭での「中桁前の踊り」、寒水白山神社境内での「お庭踊り」と「拝殿前の踊り」の合計3回が踊られます。

当日のタイムスケジュール

  • 10:30

    呼び太鼓

    祭礼当日の朝、拍子打ちが中桁の家に集まり、太鼓と鉦(かね)の試奏を始めます。これは祭礼の開始を告げる合図で、呼び太鼓または寄せ太鼓と呼ばれています。歌がしらとして踊りの最初に演奏される「すっ天でんしこ」「天つくて」「ちっから」の3曲と、「打ち上げ」の1曲が演奏されます。

  • 12:00

    打ち出し

    正午頃に役者全員が中桁の家に揃い、打ち出し行事が始まります。これは、中桁の家の座敷で行われる音合わせの試奏、杯ごと、中桁の家からの行列の出立と道行、中桁の家の前庭への入場までの一連の行事を指します。
    まず音合わせでは、中桁の家の主人、禰宜(ねぎ)、自治会長、寒水掛踊保存会の役員が見守るなか、道行の道中曲7曲と歌がしらの3曲が一通り演奏されます。音合わせが終わると杯ごとが行われ、その後、役者たちは行列を作り、一旦中桁の家の敷地を出て周囲を一回りしてから、中桁の家の前庭へ入場します。道行の曲は「しゃげり」「妙見拍子」「おかざき」「こしづめ」「十六拍子」「七つ拍子」「三つ拍子」の順で演奏されます。

  • 12:15

    中桁前の踊り

    中桁の家の前庭で、役者たちは拍子打ちを囲むようにして並び、最初の踊りである「中桁前の踊り」を行います。この踊りは、寒水白山神社での踊りと比較すると動作が大人しく、拍子打ちの演奏に合わせて音頭と地歌が交互に歌いながら進行します。「中桁前の踊り」が終わると、役者たちは再び行列を作り、寒水白山神社を目指して出発します。

  • 13:10

    行列

    中桁の家から寒水白山神社までに行列が進む道程は昔から決まっていて、新道が通った後も一部は変更せずにそのまま使われています。直線距離にして1kmに満たない短い距離ですが、寒水白山神社に到着する直前に必ず休憩をとることになっています。
    休憩が終わると行列は再出発し、寒水白山神社の鳥居をくぐって境内に進入します。一度幣殿(へいでん)前まで進み、反時計回りに回りながら踊りの定位置までゆっくりと進みます。拍子打ちは行列と一緒に拝殿の周りを回る途中で列から離れ、庭の中央に小さな円を作りつつ、そこで反時計回りに回りながら演奏を続けます。悪魔払、薙刀振(なぎなたふり)、大黒舞も行列から離れて、その他の役者で形成される大きな円陣の内側に入り、拍子打ちの小円の周辺を動き回ります。

  • 15:30

    お庭踊りと拝殿前の踊り

    役者たちが定位置に納まると、小休止の後、「お庭踊り」が始まります。拍子打ちは、庭の中央で反時計回りに回りつつ太鼓と鉦を叩き、「お庭踊り」の歌詞が後半に差し掛かるとニワハキと呼ばれる動作を始めます。これはシナイを地面に擦るようにしながら振り回す動作です。この際にシナイから脱落した花飾りを拾うと縁起物になると言われていますが、拾ってよいのは一部の役者のみです。
    「お庭踊り」が終わると、午後3時頃から休憩時間となります。
    午後4時頃、「拝殿前の踊り」が始まります。この踊りではニワハキが「お庭踊り」よりも早く入るようになり、本楽ではシナイの花飾りを全て散らすほど激しく踊ります。
    最後に「めでためでたののやれそりゃめでたのよ」から始まる「拝殿前の踊りのしずめ歌」へ移行すると、拍子打ち世話役が、シナイを背板に固定する紐を切り、シナイの竹を引き抜きます。そして役者の円陣の内側にそれを置くと、近くにいる役者が脱落しなかった花飾りをもぎ取り、持ち帰ったり、近くの見物人に渡したりします。
    本楽最後の「打ち上げ」のみ、拍子打ちは最後の拍子に入るとテンポを目一杯上げて叩き上げ、それが終わると拍手が起こり、その場で掛踊は終了となります。

  • 16:00〜16:50

    踊り納め

    掛踊の終了と同時に、庭の中央に役者や見物人が輪を作り、そのまま寒水に伝わる踊り歌のひとつ「どじょ(寒水どじょう)」を踊ります。これは祭礼後の余興という位置づけで、自由参加の踊りです。

開催情報

  • 開催場所

    〒501-4301 郡上市明宝寒水1203番地

  • 開催期間

    9月第2日曜日とその前日※土・日曜日の両日とも同じ内容で行われます。
    ※天候など状況により時間・内容に変更が生じることがあります。

  • アクセス

    東海北陸自動車道郡上八幡ICより車で約30分

一般カメラマンの皆様へお願い

寒水の掛踊は、神様に世の平安と豊年満作を願う、寒水地域住民にとって大切な伝統行事です。一般のカメラマンの皆様には、以下の点にご留意いただき、地域住民や観光客同士でトラブルにならないようご配慮ください。行事が平穏無事に奉納できるよう、皆様のご理解とご協力をお願いします。

  • ① 掛踊の輪に入っての撮影、行列を横断して踊りをさえぎる、踊りに支障をきたすほど接近して撮影などの行為は固く禁止します。

  • ② 勝手に建物内や農地に入るなどの行為は固く禁止します。

  • ③ 撮影者同士でお互いに譲り合う配慮など、ひとりひとりが撮影マナーを守ってください。早朝からの場所取りについては移動をお願いすることがあります。

  • ④ 路肩駐車は市営バスの運行など交通の妨げになります。決められた場所にご駐車願います。

  • ⑤ 公序良俗に反する撮影は固く禁止いたします。撮影した写真を個人のブログやSNSなどに掲載される場合は、写真の内容にご配慮ください。

  • ⑥ ドローン(無人航空機)を使用しての空中からの撮影は禁止です。落下等による事故・怪我の恐れがあります。

  • ⑦ 営利を目的として写真や動画等を撮影し販売する行為を固く禁じております。

※ルール・マナー違反行為を発見した場合は、スタッフよりお声がけいたします。
スタッフの指示に従っていただけない場合は、寒水地区よりご退去いただくこともございます。

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